十年巻き戻って、十歳からやり直した感想

66 :名も無き被検体774号+ :2012/10/19(金) 20:45:07.83 ID:vRIuLzlA0
妹と図書館に行ってきた時に借りた本によると、
ドッペルゲンガーには、以下のような特徴があるらしい。

・周囲の人間と会話をしない。
・本人に関係のある場所に出現する。
・ドッペルゲンガーに出会った本人は死んでしまい、
ドッペルゲンガーがオリジナルになってしまう。

ちょっと考えればわかることだけど、これらの特徴、
どちらかというと全て、僕の方に当てはまるんだよな。

友人のいない僕はめったに人と会話しないし、
同じ大学に通う僕らは出現場所が似ているし、
死ぬとしたら彼の方だし(僕が殺すからね)、
向こうの方が見た目も中身も一周目の僕に近い。

これじゃあまるで、僕が偽物みたいじゃないか。

69 :名も無き被検体774号+ :2012/10/19(金) 21:57:05.56 ID:vRIuLzlA0
友人がいないと言えばさ、一周目の僕は、
仲良く談笑できるくらいの相手は、大学中に、
控え目に見積もっても二百人はいたんだよ。

当時の僕は、そいつらが皆、癖こそあれ、
それぞれにいい所を持った奴に見えたんだけど、
今になって少し離れた場所から見ていると、
どいつもこいつも、ろくでなしのように見えたね。

自分と関係のある人間が良いやつに見えて、
関係のない人間が嫌な奴に見えるのは当前だけどさ、
変な話、そういうことに僕は慰められたんだよ。

ああ、少なくとも、一周目の僕は、全てにおいて
恵まれていたわけじゃなかったんだ、って思うとね。

惨めな話だよ、そんなことに喜びを感じるなんて。

70 :名も無き被検体774号+ :2012/10/19(金) 22:08:42.41 ID:vRIuLzlA0
かつての友人たちが、一周目とは違う顔を
僕に見せるのは、なかなか興味深かったね。

優しいと思ってた奴が利己心の塊だったり、
謙虚だと思ってた奴が自己顕示欲の塊だったりさ。

ただ、これは僕の憶測だけど、一周目において、
僕が彼らのことを良い人間だと感じていたのは、
けっして勘違いではなかったと思うんだよ。

73 :名も無き被検体774号+ :2012/10/19(金) 22:19:58.26 ID:vRIuLzlA0
人ってのは、極端に優れた人物を前にすると、
無意識にそいつの影響を受けてしまって、
一時的に良い人間になれるんじゃないかな。

一周目の僕を前にしているときに限定すれば、
おそらく彼らは、実際に良い人間だったんだよ。
逆に、今の僕みたいなのを前にすると、
肩の力を抜いて、安心して屑になれるんだ。

僕が何を言いたいかっていうとね、
相手が嫌な人間だと感じたら、その時点で、
少なからずこちらにも責任があるってわけさ。

74 :名も無き被検体774号+ :2012/10/19(金) 22:31:56.64 ID:vRIuLzlA0
ただ、いくら自分と関係がなくなっても、
これっぽっちも魅力を減じないどころか、
ますます魅力を増すような人間もいたね。
まあ、もちろん、元恋人のことだけどさ。

手に入らないものほど欲しくなるってのもあるけど、
二周目の僕は、下手をすれば一周目の僕より、
更に彼女を好きになっていたように思うな。
うん、崇拝していたと言っても過言ではないね。

今こそ、今こそ人生をやり直すチャンスをくれよ、
そう僕は思った。今度こそ上手くやってみせるからさ。

僕は布団にもぐり、目を閉じて、その晩も祈る。
目が覚めたら三周目が始まっていますように。

75 :名も無き被検体774号+ :2012/10/19(金) 22:50:05.67 ID:vRIuLzlA0
さて。妹が家出してきてから、五日が経過した。

さすがにそろそろ邪魔になってきたから、
勇気を出して、「いつ頃帰る?」と聞いてみると、
「おにいちゃんが帰れ」と返された。僕が悪かったよ。

ちょうどその日、母親から電話があって、
妹がそちらに行っていないかと聞かれたから、
五日前から居座っていることを正直に話してやった。

そのことを妹に伝えると、彼女は「そっか」とだけ言い、
しばらくすると、荷物を丁寧にまとめ始めた。
こういうところは、異様にものわかりが良いんだよな。

76 :名も無き被検体774号+ :2012/10/19(金) 22:57:00.94 ID:vRIuLzlA0
バスターミナルまでは見送ることにした。
雪が結構ひどくて、あまり街灯もない道で、
妹一人で行かせるには心配だったからね。

隣と呼んでいいのかどうか分からないくらいの
絶妙な距離を保ちながら歩く僕たちは、
あいかわらず、終始口をつぐんでいた。
一周目だったら、手を繋いで歩いてたとこだよ。

妹は、僕のことを恨んでるんじゃないかと思ったな。
まあ、とっくに嫌われてるからいいけどさ。
それに、これから人一人殺そうって人間が、
誰にどう思われるか一々気にしてたら、きりがないよ。

79 :名も無き被検体774号+ :2012/10/19(金) 23:03:49.33 ID:vRIuLzlA0
バスターミナルの建物は老朽化してて、
壁や床はあちこち黒ずんで、蛍光灯は黄ばんで、
椅子のクッションは破れて中身が飛び出し、
売店には薄汚いシャッターが下りていた。

バスを待つ客も数人のみで、しんとしていた。
あまりにも陰鬱な感じがして、まるでここにいる皆が、
家出先から実家に帰るとこなんじゃないかって感じ。

「汚いところ」と妹は言った。「お兄ちゃんの部屋みたい」
「情緒があるよ」と僕は自分の部屋をフォローした。

81 :名も無き被検体774号+ :2012/10/19(金) 23:14:55.55 ID:vRIuLzlA0
僕と妹は、40cmくらい距離をとって椅子に座り、
カップ式自販機のココアを飲みながらバスを待った。

ひどい場所だったね。ここからバスに乗ったら、
昭和や大正に連れてかれるんじゃないかと思った。
まあ、本当にそうだとしたら、僕は進んで乗っただろうけどね。

僕がココアを飲み終えると、妹は「ん」と手を差出し、
僕のカップを自分のカップに重ね、捨てに行った。
すたすた歩く妹の背中を、僕は後ろから眺めていた。

一周目の妹と比べると、ずいぶん頼りない感じがしたな。

82 :名も無き被検体774号+ :2012/10/19(金) 23:22:12.87 ID:vRIuLzlA0
突然僕は、妹に、ものすごく悪いことをしたような気になった。

妹が家出した十六歳の女の子だってことを、
僕は、きちんと配慮していたと言えるだろうか?
本当は、母親には嘘をつくべきだったんじゃないか?

そもそもこの子は、家出なんてするタイプじゃないんだ。
よっぽどの考えがあって、僕のもとに来たんだろう。

せめて本人が満足するまでの間くらいは、
かくまってやった方が良かったんじゃないか?

83 :名も無き被検体774号+ :2012/10/19(金) 23:33:45.66 ID:vRIuLzlA0
妹がバスに乗り込む寸前、「なあ」と僕は言った。
「また家出したくなったら、来るといいよ」

こんな台詞でも、言うのにずいぶん勇気を必要とした。
二周目の僕は、家族に対してさえ臆病なんだよ。

振り返った妹は、めずらしく目を見開いて、
しばらく立ち止まって僕の顔を見て、
「そうする」と言って笑い、バスに乗り込んだ。

バスが行ってしまうと、僕は待合室に戻り、
帰り道に向けて、再びココアで体を温めた。
妹の笑顔を見て、やけにほっとしている自分がいたな。

84 :名も無き被検体774号+ :2012/10/19(金) 23:37:20.49 ID:UO/D64dt0
なんだろう、笑ってくれただけなのに妹がかわいい

85 :名も無き被検体774号+ :2012/10/19(金) 23:44:28.71 ID:vRIuLzlA0
妹は僕の言葉に甘えることにしたらしく、
三日後、再び僕の部屋を訪れた。

家にいるときに妹がすることと言えば、
一方的に僕の悪口を並べ立てた後、
「おにいちゃんは駄目だねー」と言うことだった。

そして僕の夕飯をおいしそうに食べ、
僕のベッドを占領してすやすや寝た。

翌日、父親が迎えに来て、妹を連れて帰った。
この分だと、またすぐに戻ってくるだろう。
何が彼女をここまでさせるんだろうか?

94 :名も無き被検体774号+ :2012/10/20(土) 16:36:35.08 ID:JuWNwpCZ0
ところで、二周目の僕が、擁護しようがないくらい
明らかに一周目の僕より劣っているとは言え、
部分的には、優れているところもあったんだ。
第一、そうでなきゃ、やってらんないよね。

二周目の僕は、一周目の僕と比べると、
百倍くらい本を読む人間だったんだ。
それはもちろん、孤独を紛らすために、
図書室に通ったことが起因してるんだけどさ。

そして、これから話す出来事において、
その趣味がそこそこ役に立ったんだよ。

96 :名も無き被検体774号+ :2012/10/20(土) 16:44:08.20 ID:JuWNwpCZ0
かつての僕は、恋人のことを、完全に分かった気でいたな。
五年間、ずっと一緒にいて、実に色んなことを話したからね。
ところがさ、案外、僕の知らない面も存在したみたいなんだよ。

その日も僕は、妹に踏まれて目を覚ましたんだ。
「図書館に本返すから」と妹は言った。「市民の義務だから」
まあ、午後四時にぐっすり寝てる僕も悪いんだけどさ。

図書館につくと、妹は本の束を抱えて歩いて行った。
辺りは早くも薄暗くなってて、街灯が点きはじめてたね。

97 :名も無き被検体774号+ :2012/10/20(土) 16:52:29.83 ID:JuWNwpCZ0
僕は駐車場のすみっこ行って、煙草に火を点けた。
そこは物置みたいになってて、色んなものが散乱してたな。
錆びた自転車とか、ポールとか、柵とか、そういうもの。
ガラクタの中で、室外機だけが辛うじて息をしていた。

僕は柵に腰かけて、煙草を吸っていたんだ。
なぜかそこには、きちんとした灰皿があったからね。
二周目の僕は、こういう寂しい場所にくると、
心が安らぐような人間になってたんだ。

ふと見ると、こっちに向かって誰か歩いてくるのが見えた。
どうやら僕と同じ用らしくて、手には煙草を持っていて、
――そう、それが僕の元恋人だったわけなんだよ。

102 :名も無き被検体774号+ :2012/10/20(土) 17:04:10.70 ID:JuWNwpCZ0
僕の元恋人はとっても礼儀正しい子だったからさ、
気まずそうな顔をしながらも、僕に挨拶したんだ。
相手が誰であれ、笑顔で挨拶してくれる子なんだよ。

僕も同じように挨拶しかえしたけど、内心、取り乱してたな。
彼女が喫煙者だなんてこと、僕は知らなかったし、
この図書館の利用者だってことも知らなかったんだ。

あれだけ話す機会を欲しがっておきながら、
いざとなると、何にも言葉が出てこないんだよ。
何か喋んなきゃ、って焦るばかりでさ。
なんとか会話を繋いで引きとめよう、ってね。

103 :名も無き被検体774号+ :2012/10/20(土) 17:12:37.38 ID:JuWNwpCZ0
「本、借りに来たの?」と彼女は僕にたずねてくれた。
「僕じゃなくて、妹がね」と僕は正直に答えた。
「そっか、妹さんか。……君は本、読まないの?」

「そこそこ」と答えると、元恋人は嬉しそうな顔をした。
周りに本を読む人間が少なかったんだろうね。
それから僕たちは十分くらい、本の話をしたんだ。

他愛もない話だったよ。大した意味のない会話。
一周目の僕だったら、二秒で忘れるような会話さ。

でもさ、たったそれだけのことで、僕は、
嬉しさで胸がはちきれそうだったんだ。
この時間が、少しでも長く続けばいいって願ったよ。

104 :名も無き被検体774号+ :2012/10/20(土) 17:21:55.14 ID:JuWNwpCZ0
「煙草、吸うんだね。意外だな」と僕が言うと、
僕のかつての恋人は、困ったような顔で笑った。
「彼にも秘密にしてるんだ。今の所、君しか知らない」

僕はその言葉を脳に刻みつけたね。
”君しか知らない”。実に心地よい響きだよ。

辺りが真っ暗になって、彼女は帰って行った。
僕はしばらく、彼女との会話の余韻に浸っていたな。
止まらない体の震えは寒さによるものなのか、
興奮によるものなのかは、分かんなかった。
こんなんで喜べるなんて、エコの極みだよね。

それに、このとき僕はまだ、自分のしている
致命的な勘違いには気づいていないんだ。

105 :名も無き被検体774号+ :2012/10/20(土) 17:28:23.13 ID:JuWNwpCZ0
妹はすでに車で待機していて、僕が戻ると、
「五分の遅刻」と頭を五回たたいてきた。
一時間遅刻したら大変なことになってたと思うよ。

図書館を出てからしばらくして、妹が言った。
「おにいちゃん、さっきの女の人、仲良いの?」

「いや。僕と口をきいてくれるくらい、あの子が優しいってだけ」
「ふうん。じゃあ、私も優しいね。口きくから」
「違うな。僕たちは単に仲が良いんだよ」
「ええ、そうなの?」と妹は迷惑そうに言った。

107 :名も無き被検体774号+ :2012/10/20(土) 18:04:05.46 ID:JuWNwpCZ0
街路樹や店先にイルミネーションが灯り、
いたるところでクリスマスソングが流れ、
駅前には巨大なモミの木が設置され、
いよいよクリスマスが近づいてきていた。

妹は四回目の家出から無念の帰宅をして、
僕は駅にあるカフェでコーヒーを飲んでいた。
そこからだと、広場の様子がよく分かるんだ。

そして駅前の広場は、僕の元恋人が、
待ち合わせによく使っていた場所なんだよ。
僕はそこで、彼らが落ち合うのを見張っていた。

この日は、ちょっと特別な日なんだ。

110 :名も無き被検体774号+ :2012/10/20(土) 18:17:52.71 ID:JuWNwpCZ0
言い忘れてたけど、僕の誕生日って言うのは、
十二月二十四日、クリスマスイブなんだよ。

そして僕の恋人は、クリスマスと誕生日が被るのは
嫌だということで、一週間前に祝うようにしていたんだ。

ドッペルゲンガーも僕と誕生日が同じらしくて、
lクリスマスツリーの下で恋人と落ち合った彼は、
綺麗に包装されたプレゼントを受け取っていた。

こんな立場じゃなきゃ、微笑ましい場面だったんだど、
僕はそれを見て思わず頭を抱えたね。

111 :名も無き被検体774号+ :2012/10/20(土) 18:26:39.97 ID:JuWNwpCZ0
それでね、ふと横に目をやると、おかしいんだよ、
僕とまったく同じように頭を抱えている人がいたんだ。

そいつをよく見ると、知らない顔じゃなかった。
というのも、その子は小中高と同じ学校に通っていて、
さらには大学の学部まで一緒の子だったから、
人の顔を覚えられない僕でも、さすがに覚えてたんだ。

でも、あんまり口をきいたことはなかったな。
だって、向こうも僕には言われたくないだろうけど、
ひどく話しかけづらい子だったんだよ。

彼女の視線は、僕と同じで、駅の広場に向いていた。
そりゃあ、ここにいたら、他に見るものはないんだけどさ、
彼女を見ているうちに、僕の中で何かが引っかかったんだ。

114 :名も無き被検体774号+ :2012/10/20(土) 18:44:22.82 ID:z9P33ux30
そうきたか

113 :名も無き被検体774号+ :2012/10/20(土) 18:39:16.67 ID:JuWNwpCZ0
人ってさ、一緒にいる時間が長いと、
口癖とか仕草とかが伝染るじゃないか。

だから、一周目において、僕と恋人の間には、
いろんな共通する「癖」があったんだ。

そのとき隣の女の子がやっていた、
左手で後頭部の髪をやたら触る仕草は、
偶然にも、僕から恋人に伝染った癖の一つだった。

なんだか、すごく懐かしい感じがしたね。

116 :名も無き被検体774号+ :2012/10/20(土) 18:59:52.07 ID:JuWNwpCZ0
彼女が顔を上げたとき、僕らの目が合った。
その一瞬で、どうしてか、僕は彼女に関して、
色んなことが分かっちゃったんだ。

その一。彼女は僕の代役に恋している。
限りなく似たような感情を抱いていると、
目を見ただけで、分かるものなんだよ。

その二。彼女は僕の元恋人に嫉妬している。
たしかに、思いを寄せている人間と
あれだけ親密にされたら、そうもなるよね。

その三。彼女には”一周目”の記憶がある。

115 :名も無き被検体774号+ :2012/10/20(土) 18:58:18.78 ID:9NcAP9/U0
まさかの展開

117 :名も無き被検体774号+ :2012/10/20(土) 19:07:09.75 ID:Sy59MbBv0
鳥肌っ

118 :名も無き被検体774号+ :2012/10/20(土) 19:10:35.94 ID:JuWNwpCZ0
何ていうかさ、「やり直しにおける失敗」の
スペシャリストである僕から言わせるとね、
二周目で失敗した人間に特有の感情があるんだ。
隣にいる女の子から、僕はそれを感じ取ったんだよ。

そんでさ――これについては最初から
説明しておくべきだったんだろうけどさ、
実を言うと、僕が持つ一周目の記憶には、
いくらか致命的な欠陥があったんだ。

119 :名も無き被検体774号+ :2012/10/20(土) 19:18:14.75 ID:JuWNwpCZ0
それは、「思い出し方に制限がかかっている」ってこと。
自分はこういう特徴の人間とこういう関係がある、
みたいなことはしっかり覚えてたんだけど、
実際の名前、顔、声みたいな具体的情報は、
いくら思い出そうとしてもはっきりしなかったんだ。

「表情が豊か」とか「日焼けしている」とか、
「大人しそうな名前」とか「目つきが悪い」とか、
そういう風には思い出せるのに、だよ。

でも、二周目の僕は、そのことを軽視していたんだ。
一周目の再現をするだけの二周目においては、
記憶に制限があっても、さほど支障はないように見えたからね。
それに、記憶ってのは、多かれ少なかれ、
はじめからそういう不確かな性質があるものだから。

121 :名も無き被検体774号+ :2012/10/20(土) 19:25:47.34 ID:JuWNwpCZ0
さて、僕の言わんとすることはもう分かると思うけど、
以上の情報をまとめると、導き出される結論は一つ。

隣にいる女の子は、僕のかつての恋人が、
人生のやり直しに”失敗”した姿なんだよ。

そう。席を奪われたのは、僕だけじゃなかったんだ。
僕が中学の頃に告白したのは見当違いの相手で、
殺人を犯してまで取り戻そうとした恋人は人違いで、
僕がいつも影から見ていた二人は、両方とも代役だったんだ。

そして僕の本物の恋人は、いつだって傍にいたんだよ。

145 :名も無き被検体774号+ :2012/10/21(日) 20:22:20.49 ID:0NqI+JUK0
かつての恋人が自分と同じような状況にあって、
同じ苦悩を抱えていると知ったとき、
けれどもね、僕は喜びはしなかったんだ。
いや、むしろ絶望を深めたと言ってもいい。

どうしてかと言うとね、たとえ隣にいるその子が、
僕の本当の恋人だったとしてもね、今僕が好きなのは、
より一周目の彼女に近い、”偽物”の方なんだよ。

僕が気にするのは「オリジナルかどうか」じゃなくて、
「一周目と同じ気持ちにさせてくれるかどうか」だったんだ。
変わっちまった本物には、もはや興味がないんだな。